「パパ」は険然とした顔で、手にした側地の健診結果を見つめます。
「脂肪肝…これはMASLDだな…」
そんなパパをよそに、ママ、ミサ、いっしー、ゆうたちは今日もファンタジー世界の旅を続けています。
今回のテーマは「脂肪肝も助ける、地中海式食事」。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、世界の全人口の約25%が罹患しているとされる、まさに“現代の国民病”です(Diehl AM, Day C. N Engl J Med. 2017;377(21):2063-2072.)【https://doi.org/10.1056/NEJMra1713249】。
そして近年、NAFLDは「MASLD(代謝機能障害関連脂肪肝疾患)」へと名称が改められ、生活習慣病のひとつとして再定義されました。
日本でも年々増加するこの「MASLD」に対して、正しい食へのシフトは今、必須です。
私は内科専門医として、自身のMASLDを経験しながら、家族との生活を通じて、**誰でも家庭で実践できる“地中海式ライフ”**をご紹介します。
キャラクター紹介
- パパ:46歳。内科専門医。FXチャート見ながらお茶をすするタイプ。MASLD指摘あり。早朝テニスやランニングを習慣に。
- ママ:37歳。元理学療法士。感情や表情で伝える種。パパとはテニスきっかけの結婚。
- ミサ:9歳。出来る女子。パパの健康を悪く思っている。
- いっし:6歳。ボールのことしか考えてない元気子。
- ゆう:0歳。FX急落と同時に泣く天才的ベビー。
- パンダ:猫。パパとの相性悪。貿易がうまくいってる日だけなついてくる。
脂肪肝(MASLD・MASH)とは?基礎知識と危険性
病名が変わった理由と背景
2023年、欧州肝臓学会(EASL)・米国肝臓病学会(AASLD)などが中心となり、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)は「MASLD(代謝機能障害関連脂肪肝疾患)」へと名称が変更されました【19†NASH 栄養療法.pdf】。
これは「アルコール性でない=自己責任」といった誤解や偏見を防ぎ、脂肪肝がれっきとした代謝疾患であることを強調するための変更です。
放置するとどうなる?肝硬変・肝がんのリスク
ミサ:「パパ、それ放っておくとやばいやつだよ…」
パパ:「うっ…図星」
脂肪肝の中でも炎症や繊維化を伴うMASH(旧NASH)になると、肝硬変や肝細胞がんのリスクが増加します。
体重の7~10%減量により、肝線維化が改善する可能性があるとする報告もあります【18†2)肥満治療,食事・運動療法.pdf】。
医師がすすめる脂肪肝対策:地中海食の基本とは
どんな食材?具体的なメニュー例
ミサ:「ねぇパパ、地中海食って…パエリア?」
パパ:「違う、それはスペイン料理」

地中海食の基本食材:
- 野菜・果物(ブロッコリー、トマト、オレンジなど)
- オリーブオイル
- 魚(特に青魚)
- 全粒穀物(玄米、全粒パンなど)
- 豆類(レンズ豆、ひよこ豆)
- ナッツ類
- 適量の赤ワイン(日本人は控えめに)
地中海食が脂肪肝に効く理由【論文紹介あり】
2021年に発表された**久留米大学とシカゴ大学の共同研究(Kawaguchiら)**では、地中海式食事(Mediterranean Diet)が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に与える影響について、6件のランダム化比較試験(RCT)を対象にメタアナリシスを実施しました【https://doi.org/10.1055/s-0041-1723751】:contentReference[oaicite:0]{index=0}。
この研究では、6か月間地中海食を継続した群では、肝脂肪の蓄積やインスリン抵抗性に明らかな改善が見られたと報告されています。具体的には、肝脂肪量を反映する「脂肪肝指数(FLI)」が有意に低下し、標準化平均差(SMD)は**-1.06**(95%信頼区間:-1.95~-0.17、p=0.02)と示されました。
さらに、インスリン抵抗性の指標である「HOMA-IR」についても、地中海食群で有意な低下が確認され、SMDは**-0.34**(95%信頼区間:-0.65~-0.03、p=0.03)という結果でした。
この研究の重要なポイントは、体重の大きな変化がなかったにもかかわらず、肝臓や代謝に関わる指標が明らかに改善されたことです。つまり、「痩せること」よりも「何を食べるか」が、脂肪肝の改善において非常に大きな意味を持つということを示唆しています。
特に、地中海食に多く含まれるオリーブオイルや魚、野菜、豆類、全粒穀物などの成分が、炎症抑制やインスリン感受性の改善に寄与していると考えられます。これらの食品群は、単なるカロリー制限以上に「質の高い食習慣」として、MASLDやMASHの治療・予防において実践的かつ科学的に支持される選択肢といえるでしょう。
日本人にもできる!地中海式ライフの実践術
我が家で試した一週間メニュー(ミサのチェックつき)
- 月:鯖の塩焼き+雑穀ご飯+ブロッコリー
- 火:トマトとひよこ豆のスープ+玄米パン
- 水:鶏むね肉のオリーブオイル焼き+焼き野菜
- 木:サーモンとレンズ豆のサラダ
- 金:アジの南蛮漬け+野菜たっぷり味噌汁
- 土:玄米リゾット(きのこ、トマト入り)
- 日:納豆+青菜炒め+海藻スープ
ミサ:「ママ、今日は合格!」
ママ(にっこり)
ゆう式「泣かない食べ方」〜赤ちゃんでも安心レシピ〜
- かぼちゃと豆乳のポタージュ
- 白身魚と野菜の蒸し煮
- オリーブオイルごく少量使用
ゆう:「ふにゃ〜…まんま♪」
脂肪肝改善のための生活習慣:食事以外に大事なこと
運動と睡眠、そして「家族の支え」
- パパ:毎朝6時にランニング5km+週2のテニス
- ママ:夕方のウォーキング+寝る前ストレッチ
- 子どもたち:外遊び1時間(ミサはピアノ前の柔軟)
パパ:「運動もだけど、睡眠不足は肝臓にも悪いらしい」
ミサ:「いつも夜中にチャート見てるもんね」
投資より健康!?パパの決意(FX画面から離れる日)
パパ:「肝臓が本当にやばいとわかったら、ドル円より血液検査見るよ…」
パンダ:「にゃっ(それは信じられない)」
まとめ|地中海式ライフで肝臓も家族も元気に
ポイントまとめ:
- MASLDは生活習慣病のひとつ。名称変更で認識が変わりつつある
- 地中海食は脂肪肝の改善にエビデンスあり
- オリーブオイル、魚、豆、野菜中心で日本でも実践可能
- 食事だけでなく、運動・睡眠・家族の協力がカギ
パパのつぶやき:
「本当に大事なのは、資産じゃなくて“家族と健康な肝臓”だったかもな…」
ゆう:「ばぶ〜(パパ、がんばれ)」
参考文献:
Kamada Y. 肥満治療,食事・運動療法. Medical*Online. 2023【18†2)肥満治療,食事・運動療法.pdf】
Kawaguchi T et al. Effects of Mediterranean Diet in Patients with Nonalcoholic Fatty Liver Disease: Semin Liver Dis. 2021;41:225–234. 【https://doi.org/10.1055/s-0041-1723751】
Nishimura K. NASH 栄養療法. Medical*Online. 2024【19†NASH 栄養療法.pdf】
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