「え、脂肪肝って“放置していい”と思ってた…」
そんな声が多く聞かれる今。けれど実は、脂肪肝=MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、進行すると肝がんや心血管病のリスクを高める現代人の“静かな脅威”です。
このブログでは、**内科・消化器・肝臓専門医であるパパ(46歳)**と、異世界を旅する家族たちが「脂肪肝の完全マニュアル」をお届けします。
最新の日本×米国×欧州の治療ガイドラインや臨床試験をもとに、
✔ 脂肪肝の原因
✔ 生活改善のポイント(食事・運動)
✔ 医学的に有効とされる薬
✔ 進行予防の科学的根拠
を、わかりやすく物語形式で解説。
**「今すぐ何をすればいいか」**がわかる構成になっています。
登場キャラクター紹介(異世界設定)
- パパ(46歳):肝臓内科医。テニスとFXチャートと論文が大好き。MASLD歴あり。最近走り始めた。
- ママ(37歳):元理学療法士。感情表現は表情担当。ウォーキングが好き。実は食事管理の天才。
- ミサ(9歳):冷静なツッコミ役。ピアノとスイーツ好き。知識の司書。
- いっしー(6歳):運動命の元気ボーイ。今日もボールと寝ている。
- ゆう(0歳):泣き声で為替を動かす(!?)家族の癒し。
- パンダ(猫):気分屋。調子が良いとドル円が上がる噂あり。
脂肪肝(MASLD)とは?なぜ放置が危険?
脂肪肝は「ただの脂肪」ではない
ミサ:「“脂肪肝”って、単に脂がたまってるだけでしょ?放っておいても大丈夫なんじゃないの?」
パパ:「それが大間違いなんだよ、ミサ。脂肪肝、正確にはMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)って言うんだけどね、これは単なる脂の蓄積だけじゃなくて、肝臓に慢性的な炎症や線維化を引き起こす病気なんだ。進行すると肝硬変や肝がんのリスクが高まるし、実は心筋梗塞や糖尿病とも密接に関係してるんだよ。」
ミサ:「えっ、肝臓だけじゃなくて、心臓や血糖まで?」
パパ:「そう。脂肪肝があるだけで、心血管疾患の発症リスクが高まるっていう大規模な研究もある。つまり、“ちょっと脂が多いだけ”って侮ると、将来大きな病気に繋がる可能性があるんだ。」
ミサ:「……じゃあ、やっぱり早めに手を打たないとダメね」
パパ:「その通り!脂肪肝は“沈黙の臓器”のサイン。今のうちに生活習慣を見直すことが、未来の自分を守ることになるんだよ」
脂肪肝の正式名はMASLD
ミサ:「NAFLDって昔の名前?」
パパ:「今は**MASLD(Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)**って言うんだ。メタボリックな問題(高血糖、脂質異常、肥満)が関係してる脂肪肝って意味だね」
脂肪肝の治し方①|最新の「食事療法」
H3:まずはカロリーコントロールが基本
ミサ:「パパ、脂肪肝を治すには、1日どのくらいのカロリーをとればいいの?」
パパ:「いい質問だね、ミサ。基本は理想体重(IBW)×25kcalが1日の摂取カロリーの目安なんだ。僕の理想体重は72kgだから、計算すると72×25=1800kcalくらいが目標になるよ」
ミサ:「その“理想体重”って、どうやって出すの?」
パパ:「これは**“身長(m)×身長(m)×係数”**で求めるんだ。係数は男性が22、女性が21だよ。たとえば僕の身長が1.8mなら、1.8×1.8×22=約71.3kg。これが理想体重(IBW)ってことになる」
ミサ:「なるほどね!じゃあ、自分の身長から自分だけのカロリー目安が出せるんだ」
パパ:「そう。**脂肪肝(MASLD)の治療では、まず“自分に合ったカロリー設定”が第一歩。**いきなり制限するんじゃなくて、“適正な範囲で整える”ことが大事なんだ」
👉 参考文献:Kawaguchi T, et al. 日本消化器病学会雑誌, 2025【https://doi.org/10.1111/jgh.12422】
地中海式+和食の融合がベスト!
ママ:「オリーブオイルにナッツ、魚や豆、野菜たっぷりの食事ね。うちの食卓ならお手のものだわ!」
パパ:「そうそう、それがまさに**“地中海式食事”**ってやつ。脂肪肝を改善する食事として、多くの研究で効果が認められてるんだ」
ミサ:「具体的にはどんなメリットがあるの?」
パパ:「**肝臓の脂肪を減らすだけじゃなく、心臓病や糖尿病のリスクも下げるってエビデンスがあるよ。**しかも、極端な制限じゃないから、長く続けやすいっていうのも大きな利点なんだ」
ママ:「なるほど、無理なく美味しく続けられるって大事よね」
👉 参考文献:Kawaguchi T, et al. 地中海食によるNAFLD改善のメタ解析(Semin Liver Dis 2021)【33】
避けたいNG食材とは?
- 砂糖・果糖(ジュース、菓子類)
- 加工肉(ハム、ソーセージ)
- 超加工食品(スナック菓子、カップ麺)
- ミサ:「ところでパパ、脂肪肝のときに“これは避けたほうがいい”っていう食べ物ってあるの?」
- パパ:「もちろんあるよ。まずは砂糖や果糖の多い食品。たとえばジュース、清涼飲料水、ケーキ、クッキーなんかは、肝臓に脂肪をためやすくする代表格なんだ」
- ママ:「それ、いっしーのおやつコーナーにあるやつじゃない?」
- パパ:「次に注意したいのが加工肉。ハムやソーセージ、ベーコンなどは、脂肪や添加物が多く、肝臓だけじゃなく心血管にも悪影響を与えるって報告されているよ」
- ミサ:「じゃあ、便利だからって食べてたスナック菓子やカップ麺も…?」
- パパ:「うん、それらは**“超加工食品”**といって、塩分や脂質、化学添加物が多く、脂肪肝の進行を促す危険性があるんだ。できれば控えて、シンプルで自然な食材を使った料理を心がけたいね」
- ママ:「やっぱり、手作りがいちばんってことね」
- 👉 参考文献:Kawaguchi T, et al. 日本消化器病学会雑誌, 2025【https://doi.org/10.1111/jgh.12422】
アルコールはどうする?
パパ:「アルコールについては注意が必要だよ。もし肝硬変や高度な線維化がある場合は、“完全な断酒”が絶対条件なんだ。お酒を少しでも続けていると、肝機能の悪化やがんのリスクが高まることが分かっているからね」
ミサ:「じゃあ、軽く飲むくらいなら大丈夫なの?」
パパ:「最近の研究では、**“少量の飲酒でも脂肪肝には悪影響”**っていうデータが増えてきてる。特にMASLDの人では、保護効果はなく、むしろ進行を早める可能性があるんだ」
ママ:「パパ、もう晩酌はやめた方がいいかもね…」
パパ:「うっ……(グラスをそっと置く)」
👉 参考文献:Kawaguchi T, et al. 日本消化器病学会雑誌, 2025【https://doi.org/10.1111/jgh.12422】
👉 関連データ:アルコール摂取と線維化進行の関連は複数のメタ解析で報告あり(EASL 2024ガイドラインより)【J Hepatol 2024;81:492–542】
章末まとめ
- カロリー制限:IBW×25kcal
- 地中海+和食スタイルがベスト
- 加工食品、アルコール制限も必須
- コーヒー1日3杯も効果的(抗炎症効果あり)
脂肪肝の治し方②|運動療法の科学的根拠
体重が減らなくても脂肪肝は改善できる!
いっしー:「パパ~、この前いっぱい走ったのに、体重が全然減ってないよ~。意味なかったのかな?」
パパ:「それがね、いっしー。体重が減らなくても、肝臓の中の脂肪はちゃんと減ってる可能性があるんだよ。実際に、週3回・1回40分の中等度の有酸素運動(METs 4.8)を12週間続けた研究では、体重の変化がなくても肝脂肪と肝硬度が有意に改善したというデータがあるんだ【39】」
ミサ:「METsってなに?」
パパ:「METs(メッツ)っていうのは“運動強度”を示す単位で、安静時を1METとしたときに、何倍のエネルギーを使っているかを表すんだ。たとえば、ゆっくり歩くのは2~3METs、早歩きや軽いジョギングが4~5METsくらい。**4.8METsは“ややきつめの有酸素運動”**って感じかな」
いっしー:「じゃあ、オレのテニスは?」
パパ:「テニスは実はけっこう高くて、シングルスなら7METsを超えるって言われてるよ。しっかり動いてる分、肝臓にもいい効果が期待できるね」
ママ:「でも、毎回そんなにきつい運動するのは大変じゃない?」
パパ:「そこもちゃんと考えられてるよ。**レジスタンス運動(筋トレ)は3.5METsと有酸素より強度が低くても、同じ効果が得られるっていう研究もあるんだ【39】。**週3回、12週間続けると、肝脂肪はちゃんと減る。体重に変化がなくても肝臓の中は変わってるってことさ」
ミサ:「へぇ〜、軽めの筋トレでもいいんだ」
パパ:「そう。有酸素運動では、脂肪分解を促すホルモンやタンパク(UCP-1やPPARγ)が活性化するし、筋トレでは筋肉の質を上げてインスリンの効き方を改善してくれる。運動の種類によってメカニズムも違うけど、どちらも脂肪肝には効果的なんだ」
ママ:「つまり“運動の内容は自分に合ったもの”でいいってことね」
パパ:「その通り。欧州のガイドラインでは“週150分以上の中等度運動”か、“75分以上の高強度運動”を推奨しているし、日本の専門家たちも“体力や年齢に合わせて、有酸素と筋トレを組み合わせることが大切”って言ってるよ【4, 34】」
いっしー:「じゃあ、オレのテニス、めっちゃ肝臓に効いてるってことか〜!」
パパ:「そういうこと!数字ばかり気にせず、“続けること”が一番の治療なんだよ」

👉 参考文献:
Kamada Y, et al. J Gastroenterol 2021(日本の専門家レビュー)【34】
Sabag A, et al. J Clin Endocrinol Metab 2022(高・中強度運動のメタ解析)【38】
Hashida R, Kawaguchi T, et al. J Hepatol 2017(有酸素 vs 筋トレの比較)【39】
EASL-EASD-EASO Guidelines. J Hepatol 2024(MASLD国際ガイドライン)【4】
最も効果的な運動とは?
- 有酸素運動:40分×週3回、12週継続(METs:4.8)【39】
- レジスタンス運動:軽負荷でも効果あり40分×週3回、12週間(METs:3.5)
パパ:「僕も朝6時にテニスしてるけど、これが“肝臓リセット”なんだよね(笑)」
章末まとめ
- 体重より“運動習慣”が重要
- 有酸素・筋トレを無理なく続けよう
- 毎日の“少しずつ”が最大の治療
H2:脂肪肝の治し方③|薬物療法の最新エビデンス
SGLT2阻害薬|糖尿病合併なら一番の注目株!
ミサ:「SGLT2って、糖尿病の薬?」
パパ:「そう。でも脂肪肝や肝硬変、肝がんまで抑制するという報告が出てるんだよ!」
👉 Empagliflozin、Dapagliflozinなどの臨床試験で肝脂肪・線維化の改善【40〜45】
👉 韓国・日本の大規模研究でも肝発がん・食道静脈瘤リスク低下【47〜49】
GLP-1受容体作動薬・tirzepatideの衝撃
パパ:「semaglutideやtirzepatideも注目の薬。MASHの改善率が60%超なんてすごくない?」
ミサ:「でも体重が減りすぎちゃう人は注意よね?」
パパ:「うん、サルコペニアには気をつけたいね」
そのほか注目薬
- ペマフィブラート:脂質異常症+脂肪肝に(ALT・肝硬度改善)【60】
- Resmetirom:2024年、米国でMASH治療薬として承認【74】
章末まとめ
- 糖尿病合併ならSGLT2阻害薬が有望
- GLP-1受容体作動薬は肥満+MASHに最適
- 新薬は今後も続々登場予定
まとめ|今日から始める脂肪肝対策3か条
- 食事は地中海食×和食で、加工食品・砂糖・アルコールを減らす!
- 運動は“減量より継続”。週150分を目安に!
- 併存疾患があれば、薬の選択で脂肪肝も治療!(病院で併存疾患があるか相談してください)
エピローグ
ミサ:「パパ、今日はしっかり走った?あと甘いコーヒーは控えてね!」
パパ:「はいはい、わかってるよ〜(チャート見ながら)」
ゆう:「ふぎゃあああ!!」
ママ:「あら、またドル円が落ちたかしら…」
いっしー:「じゃあ、ボク、パパの肝臓のために今日も一緒に走るね!」
パンダ:「ニャッ(今日はFXは好調だな…)」
ご参考・引用文献(一部抜粋)
- Tsutsumi T, Kawaguchi T, et al. Therapeutic strategy for MASLD, 日本消化器病学会雑誌 2025;122:344―358【https://doi.org/10.1111/jgh.12422】
- Newsome PN, et al. N Engl J Med. 2021;384(12):1113-1124【semaglutide】
- Loomba R, et al. N Engl J Med. 2024;391(3):299-310【tirzepatide】
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