CT検査は本当に安全なのか――。現代医療で広く利用されるCTスキャンは、病気の早期発見や重症度の把握に欠かせない、非常に重要な検査です。しかしその一方で、放射線による“見えないリスク”が潜んでいることも、決して無視できません。
2025年4月に発表された米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のRebecca Smith-Bindman氏らによる研究では、2023年に米国で行われた約9,300万回のCT検査によって、将来的に約10万2,700件の放射線誘発性がんが発生する可能性があると報告されました【https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2832778】。
この数字をもとにすると、CT検査を受けた6,151万人のうち、およそ0.17%(約600人に1人)の割合で、将来的にがんを発症するリスクがあると推定されます。頻度としては高くないように見えますが、全国規模で考えると非常に大きなインパクトです。
このブログでは、そんな衝撃的な研究結果をもとに、CT検査の「メリット」と「リスク」を、異世界の家族と一緒にストーリー形式で楽しく学びながら、医師として、そして親として、本当に必要な検査とは何かをやさしく解説していきます。子育て世代や中高年の皆さんが、安心して医療と向き合うための正しい判断力を、一緒に身につけていきましょう。
異世界「放射線の森」へようこそ!~家族キャラ紹介~
ここは、医療と魔法が共存する異世界。放射線の森に迷い込んだのは、いつもの仲良し家族。
- パパ(46歳):内科・消化器・肝臓内科専門医。CT検査の適正使用に心を砕く日々。脂肪肝持ちで毎朝ランニング&テニスが習慣。スマホでFXチャートもよく見てる。
- ママ(37歳):元理学療法士。感情豊かで表情で語るタイプ。ウォーキングとテニスが趣味。
- ミサ(9歳):冷静な小4女子。ピアノとスイーツが大好き。パパに鋭いツッコミを入れることもしばしば。
- いっしー(6歳):小学1年生の運動大好き男子。ボールと一緒に寝るタイプ。
- ゆう(0歳):鳴き声と為替急落のタイミングがシンクロする謎の赤ちゃん。天才肌。
- パンダ(猫):ツンデレ猫。パパと相性は悪いが、ドル円が上がると甘えることも。
CT検査で「がんが増える」って本当?
米国9300万件のCTで判明したがんリスク
「CTスキャンって、簡単に受けられて便利だけど…副作用とかないの?」とミサ。
「その話、ちょうど最近すごい論文が出たんだよ」パパがスマホでチャートを見ながら解説を始めた。
2025年4月、米国の権威ある医学誌『JAMA Internal Medicine』に掲載されたカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究によれば、2023年に米国で実施された約9300万回のCT検査が行われており、そのうち約10万2700件の放射線誘発性がんが発生する可能性があることが明らかになりました【JAMA Intern Med. 2025 Apr 14. https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2832778】。
この研究では、2018年から2020年に米国内の143の医療施設で行われたCT検査の実データをもとに、年齢・性別・検査部位ごとの被ばく量を詳細に解析。得られた放射線量の情報を、2023年の実際のCT検査件数に適用し、がん発生リスクを推定しました。
結果として、CT検査は有用である一方で、不要な検査が将来のがんリスクを高める可能性もあることが示されたのです。
小児のリスクが最も高い!?
「ゆうには、できるだけCT検査は避けたいわよね…」とママが不安そうにつぶやく。
実際、米UCSFによる研究では、1歳未満の女児がCT検査を受けた場合、1,000回あたり約20件のがんが将来発生するリスクがあると報告されています。これは、体の小さな乳幼児が放射線の影響を大きく受けやすいためで、小児全体で見ても大人より被ばくに対する感受性が高いことが知られています。
「年齢が上がるにつれてリスクは減っていくけど、それでも完全に安心できるわけじゃないんだ」とパパ。
例えば、15~17歳の女児でもCT検査1,000回あたり2件のがんが予測されており、子どもの検査は“本当に必要かどうか”を慎重に見極めることが重要です。便利な検査であるからこそ、小さな命を守るためには、親と医療者の適切な判断が求められます。
年齢・性別・検査部位で違うリスク
成人の91%ががん予測対象に
「えっ、そんなに多いの…?」と、ミサが驚きの声を上げる。
実は、米UCSFの研究によると、CTによる放射線誘発がんのうち約91%は成人に起こると予測されています。特に影響が大きいのは50~59歳の年代で、女性は約1万400件/500万人(約0.21%)、男性は約9,300件/500万人(約0.186%) のがんに関与する可能性があるというのです。
パパは真剣な表情で続ける。
「そしてね、特に注意すべきは腹部や骨盤のCTなんだ。これだけで3万7,500件/10万2700件、全体の約40%ものがんが予測されているんだよ」
腹部・骨盤部のCT検査は診断上とても重要ですが、被ばく範囲が広く臓器も多いため、発がんリスクも相対的に高くなるのです。だからこそ、検査を受ける際には、その必要性を医師としっかり相談し、無駄な検査を避ける意識が求められます
撮影部位ごとのがん予測件数
CT検査は確かに便利な診断手段ですが、その陰には見逃せないがんリスクが潜んでいます。米UCSFの研究によれば、2023年に行われた9300万回のCT検査によって、将来的に発生すると予測される放射線誘発性がんは約10万2,700件。その内訳を詳しく見ると、**成人では肺がんが2万1,400件(全体の約21%)、大腸がんが8,400件(約8%)、白血病が7,400件(約7%)**と、合わせて約36%を占めています。
一方、小児では**甲状腺がんが3,500件(約3.4%)、肺がん990件(約1%)、乳がん630件(約0.6%)**と予測されています。小児の件数は全体に比べて少ないものの、成長中の体は放射線に対する感受性が高く、リスクはより深刻といえます。
つまり、CTは極めて有用な検査である一方で、全体の約4割が特定のがん種に集中しているという事実からも、その使用には慎重な判断が求められるのです。
H2: 医師として、親としてどう向き合う?
「必要なCT」と「不要なCT」の線引きを
パパ:「もちろん、すべてのCTが悪いわけじゃないよ。命に関わるような緊急時には、CTはなくてはならない診断ツールなんだ」
ただし、問題は“なんとなく不安だから”とか“毎回のルーチンだから”といった理由で繰り返される不要なCT検査。パパは続けます。
「本当に必要な時にだけ使うことが大切なんだ。そうしないと、被ばくによるリスクのほうが大きくなることもあるからね」
実際、米国放射線学会(ACR)やBEIR-VII報告書でも、「検査適応の妥当性」こそが放射線被ばくリスクを減らす鍵だと明記されています。CTは便利だからこそ、その使い方を間違えない意識が大切なのです。
低被ばくCTやMRIへの切り替えも検討を
「最近は被ばく量の少ないCT機種も増えてきてるし、MRIへの切り替えも一つの選択肢よね」とママが話す。
「そうだね。たとえば、スポーツによるケガなんかはMRIで十分なケースも多いんだ」とパパもうなずく。
確かに、CTは撮影時間が短く、骨や出血の診断に優れていますが、放射線を使う以上、被ばくの影響は完全には避けられません。一方、MRIは放射線を使用しないため、被ばくリスクがゼロという大きな利点があります。
パパは続けます。「最近のCTは低線量化が進んでいるけれど、それでも“使いどき”は見極めが必要なんだよ」
つまり、検査の目的と方法を医師としっかり相談し、最適な画像診断を選ぶことが、将来の健康リスクを減らす第一歩なのです。
H2: 家族のまとめと学び
「調べる力」と「断る勇気」も大切
医療者からCT検査を勧められたとき、もしも疑問や不安があるなら、遠慮せずに質問し、必要であればセカンドオピニオンを求めることも大切です。「先生に悪いから…」と感じるかもしれませんが、自分や家族の体を守るのは自分自身。納得して検査を受けることが何より重要です。
また、検査前には必ず「このCTは本当に必要ですか?」「他の方法では代用できませんか?」と尋ねてみましょう。これだけで無用な被ばくを避けられるケースもあります。
特に注意が必要なのが、小児や若年女性。放射線に対する感受性が高く、将来的ながんリスクが相対的に上昇しやすい年代です。
ミサ:「なるほど、ちゃんと聞く勇気が大事ってことね」
ゆう:「ふぎゃー!」(たぶん“ぼく、まだ小さいからやめて~”)
大切なのは、検査を受ける前に“納得して選ぶ”という意識を持つことです。
【まとめ】CT検査とがんのリスク、私たちができる選択とは?
- 2023年に米国で行われたCT検査は約9,300万回
- その結果、将来的に約10万2,700件の放射線誘発性がんが発生する可能性があると予測された
- 小児、とくに1歳未満の女児は被ばくに対する感受性が非常に高く、特にリスクが大きい
- 例:1歳未満の女児ではCT 1,000回あたり約20件のがん発生リスク
- 成人でも検査部位によりリスクが大きく異なる
- 特に腹部・骨盤CTは全体の約40%(3万7,500件)のがんリスクに関与
- 検査の前に「本当に必要なCTか?」を医師と確認することが大切
- MRIなど放射線を使わない画像診断が適している場合もある
- 医師としても、親としても、検査のメリットとリスクを正しく理解し判断する姿勢が必要
- 「情報に基づいた選択」が、未来の健康を守る第一歩
コメント